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2015年12月30日 (水)

[考察] 女の子しか存在しない世界――日常系論

 今期のアニメとして私はいわゆる日常系の作品として、「ご注文はうさぎですか??」と「ゆるゆり さん☆ハイ!」を視聴していました。いずれも面白くて楽しませてもらってたのですが、あるとき、あまりにも当たり前すぎて意識していなかったことに気づいてしまったのです。すなわち――

 あれ、男の子って、登場したことあったっけ?

 そう、これらの作品には、主人公と同年代の男の子が、まったくと言っていいほど登場してこないのです。

 もちろん、これら日常系の作品においては、女の子たちのたわいもない会話や日常を延々と描くのが主眼となっているわけですから、男が登場するのはおかしいといえなくもない。しかし、だからといってこの作品内に男が存在しないわけでもないのに、モブにまで男の子が登場しないのはどういうことだろうかと。

 日常系の作品においても、主人公と同年代の男の子がまったく登場しない作品というは結構珍しいと思います。例えば、日常系の嚆矢となった「あずまんが大王」では、モブだけども同級生の男子高校生が登場しました。また「らき☆すた」でも明確に男女共学でモブよりではありますが男子高校生も登場しましたし、「みなみけ」では明確に主人公たちと同年代の男の子がレギュラーメンバーとして登場してきました。ですので、日常系の作品に同年代の男子の排除が必須という条件はない――と思います。

 と、ここまで考えたところで、もし日常系の作品に男子が登場したとしたらどうなるのだろうかという疑問に突き当たりました。
 例えば、日常系をテーマにした作品には「生徒会の一存」とか「異能バトルは日常系のなかで」というように、明確に男子1名に女子数人という作品も存在します。この作品も日常系を唄ってはいますが、ヒロインたちはたった1名の男子に明らかに恋愛感情を抱いている部分があり、そうなるとハーレムラブコメとどこが違ってくるの? という疑問がでてきてしまうのです。
 そう考えると日常系とは、女の子の日常から恋愛感情を排除したもの、と考えることができるわけです。例えば「みなみけ」では、あれほどヒロインたちに恋愛感情を抱いている男子が何人も登場するのに、当のヒロインたちは全然それを意識していません。だからこそこの作品は、ヒロインたちの日常を淡々と描くことができるのです。これは即ち、女の子にとって恋愛とは日常に含まれない、ということを意味しているのです。

 また、日常系にはもう一つの側面として、たとえば「日常」では、登場人物たちが非常に個性的なため、変わった言動を繰り返すというものがあります。これは「あずまんが大王」にも木村先生やちよ父といったシュールな言動を繰り返すキャラクターが登場したことの延長上にありますが、これも行き過ぎると「おそ松さん」のような不条理ギャグに陥る可能性があります。つまり、日常系と不条理ギャグとの境界もまた曖昧だということです。

 このように一口に日常系といっても、ラブコメよりの作品から不条理よりの作品まで幅が広くその境界は曖昧なのですが、そう考えると「ご注文はうさぎですか?」と「ゆるゆり」は、ラブコメ要素も不条理要素も極力排除した、日常系の極北なのではないかと思ったのです。つまり、

 女の子をメインに書きたいんだから、男の子なんて出す必要がない

 ということです。もちろん家族がうさぎに転生したとか、女の子同士の疑似恋愛とかの不条理要素は残っていますが、それは話のスパイス程度にとどまっています。これらの作品はあくまで女の子たちの日常を描きたいのだから、それの邪魔になる男の子なんて出す必要がないということなのです。
 もちろんそれは、「ご注文はうさぎですか?」や「ゆるゆり」の世界に、主人公と同年代の男子が存在しないというわけではありません。あの世界にも男子はしっかり存在します。しかしそれが主人公たちの視界に入らないため、作品内には出てこないというだけの話なのです。

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