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2008年9月22日 (月)

[考察] 作画密度が違う

 椎菜高志先生がご自身の運営していらっしゃる「完成原稿速報・BLOG版」にて(今週号の)「絶対可憐チルドレン」を休載することについての記事で、
 『ちょいと一杯のつもりで飲んで:週刊少年サンデー08/42号』
 にて畑健二郎先生のことに言及していました。

 それに対してハヤテサイトの「明日はきっと。」で、こんなご意見を述べている記事を見つけてしまいました。

 マガジンには4回掲載すると1週休む萌えマンガの大御所がいらっしゃいますので、椎名先生もゆっくり休んで、生き生きとしたチルドレンを描いてくださいね!
 
 [ネット]椎名先生が再び休載することを畑先生をネタに告知している件

 ──私はこれを読んで、今年の赤松健先生と畑健二郎先生のエープリルフールネタのやりとりを思い返してしまいました。

 

 赤松先生の今年のエープリルフールネタはご存知のとおり、「サンデーとの50周年企画で、畑健二郎先生とのコラボが実現する」でした。

実は、もう一つ大発表があります!!
何と、マガジンとサンデーの創刊50周年企画の一環として・・・


「魔法先生ネギま!」と「ハヤテのごとく!」のコラボレーション漫画が
実現しました~!!(^^)

ワー!パチパチパチ!!

  (以下略)
 AI Love Network 2008年(前半)の日記帳 4月1日より

 それに対して畑先生がサンデー・バックステージで返したのがこの言葉。

  (前略)
なんにしてもネタにしていただきありがとうございました。
あ、普段からかなりマメに見ていますよ。
なので正直、素で驚きました。
ていうかエイプリルフールだと気付かずにしばらく焦りました。

ですが……この男はスケジュールの空きを全て仕事で埋めたい
タイプの人間なので、実現するのも全然オッケーです!

 まんが家BACKSTAGE 畑 健二郎 Vol.178より
 

 この返信から伺えることは、畑先生は毎週連載を欠かさす掲載していても、明らかにまだスケジュールに余裕があるということです。

 そういう畑先生のありがたくも好意的な反応に対しての、赤松先生の返事がこれ

ああ、畑くんからバックステージで反応が。(笑)
大変ありがたくも申し訳ないんですが、赤松スタジオはそういった企画に
耐えられるだけの体力がありません(^^;)。重ね重ねスミマセン。m(_ _)m
でも、師匠とコラボやればいいですよ。それこそまさに本道。「さよなら
ハヤテ先生(学園感動巨編)」か「クメタのごとく!(漫画家ドキュメン
タリー)」とか。
 AI Love Network 2008年(前半)の日記帳 4月9日より
 

 つまり冗談で書いたのは良いけれど、赤松スタジオの場合はよそに大きく力を割くだけの余裕がないと言っているのです。マガジン全連載陣超合作漫画『魔画尽町殺人事件』のような数コマの参加ならともかく、連載に影響が出かねないほどの合作漫画に力を入れる余裕は無いということなのでしょう(その割にはアニメのアフレコやイベントにはよく参加していたりもするのですが)
 赤松先生の場合は1話を書くのに基本は8日回しで、その都度1日休みを入れるから1話で合計9日使います。9日×4話=36日つまり5週間と1日ということで、4話に1度休みを入れているのです。

 毎週連載を欠かさず上げていてなお余裕のある畑先生の活躍ぶりと比較してみると、4話に1回休みを入れる赤松先生の休載の多さはやはり残念な気持ちにならざるをえません。畑先生のファンが揶揄するのもむべなるかな。

 

 でも私個人の意見としては、赤松先生と畑先生を同列に比較する方が間違っていると思うのです。
 赤松先生の作画はこれを見れば分かるとおり、

Negima_ron0701

 こんな小さなコマでもネギの髪の毛を、ベタ・トーン・ホワイトの3色に塗り分けています。しかもこのシーンでは、影を表現するために濃い目のスクリーントーンを使っているので、計4色です。カラーでもない白黒二値の連載漫画で4色ですよ。しかもネギは、作品内でもっとも登場機会の多い主人公キャラなのです。
 さらに顔や服を細かく見ていくと、やはり影を表現するためにトーンの上にトーンを重ね貼りしているのがわかるでしょう。赤松先生はアニメを意識して作画しているのか、登場キャラには必ず影を表現することを忘れていないのです。
 その結果どういうことになるかというと、これ。

Negima_ron0702

 古菲のような地黒キャラでも、必要とあらば影を表現してしまうのです。しかも古菲に使われているようなドットトーンは、単純に重ね張りをするとモアレが発生するため、ネギま!では粒度の異なる2つのトーンを切り張りして違和感なく張り合わせているのです。これがどんなに手間隙のかかるかは想像に絶します(赤松先生は背景にはCGを駆使しながらも、人物描写には未だにアナログ的手法に拘り続けている)。
 しかも地黒のレギュラーキャラは古菲だけでなく、クラスメートだけでもあと龍宮とザジがいるのです。しかも今現在は魔法世界編ということで、エミリーのような地黒キャラが多数登場しているのです。それらの肌の全てに、影が表現されているのです。
 だから赤松先生の場合は、作画が簡単に済むはずのシロケのキャラですら手間隙がかかります。

Negima_ron0703

 シロケに白い服装が基本であるあやかでさえ、影の表現にこれだけトーンを使っています。私たち読者が「ネギま!」に対して持つ、荒唐無稽な学園ファンタジー漫画のはずなのにそこから感じる圧倒的なリアリティは最初から細かい部分まで作りこまれた世界観とともに、それを表現するためにここまで緻密に描きこまれた作画にもその理由の一端があるのです。

 

 それに対して畑先生の場合は、実に巧みにキャラ造形をしています。なにしろ、

Negima_ron0704

 主人公とヒロインが揃ってシロケ。おまけにセカンドヒロインのマリアですら、スクリーントーンの単色でホワイトによるエンジェルリング(髪の毛のてかり)すら描かれていません。
 私の見たところ、ハヤテのレギュラーキャラで髪の毛が2色で描かれているのはただ一人

Negima_ron0705

 伊澄だけですね。他のキャラはカラーシーンや特に演出意図があるシーンでは(影を表現するために)トーンが貼られたりすることもありますが、通常はベタ・トーン・ホワイトのどれか一色のみです。
 (追記:もう一度読み返してみたら、咲夜とサキも2色でした。咲夜は分かりづらいから仕方ないにしても、サキを見逃すとは…)

 つまり畑先生の場合は、作画に極力時間をかけないようなキャラ造形を最初から行っているのです。
 もっともそれが悪いと言っているわけではなく、「ハヤテのごとく!」が持っている荒唐無稽な世界観、例えば日本の庶民が考えるようなお金持ちの描写とか、執事と言うだけで必殺技が使えたりするような現実世界から隔絶されたような世界観を描くのに、作画にそこまでこだわる必要もなかったということなのです。
 それに作画に対する人気を考えると、明らかに畑先生の方がコストパフォーマンスが高い。読者にとって作画の上手い下手というのは、その漫画が面白いか否かの前には何の意味ももちません。「ハヤテ」の人気は明らかに「ネギま!」に匹敵するか、あるいはそれ以上なわけですから。

 

 私はこの赤松先生と畑先生の作画にかける手間隙の違いを、「作画密度が違う」とこっそり読んでいます。作画密度というのは私の造語ですが、赤松先生は「ネギま!」という荒唐無稽な世界観に本当にそこにあると思わせるようなリアリティを与えるために作画密度を上げているのであって、畑先生の場合は作画ではなく、作者が持つセンスで勝負しているために作画密度をあまり上げる必要がないのです。つまり、両先生の作画密度の違いは単純に作品に対する方法論が違うと言うだけの話です。

 

 ただし、赤松先生の凄いところはこれだけ緻密に作画に手間隙をかけるのに、作画に決して溺れていないというところです。
 作画に溺れてしまうとどうなるかというと……

Negima_ron0706

 こうなります。
 萩原一志先生の場合はキャラに振り回されている観もあるのですが、まず間違いなく作画(や演出)に力を入れすぎてストーリーが目に入らなくなってしまったパターンと言えるでしょうね。1巻あれば十分だと思えるような話を、19巻から25巻まで延々と続けるようになっていますし。いい加減話を進めてくださいと言いたくなります。

 逆に畑先生の師匠の久米田康治先生の場合は、

Negima_ron0707

 全身像を描くときですら影を示すトーンは一切貼っておりません。しかしシンプルではあるが完成度の高いキャラ造形であるとも言えます。今の久米田先生はネタを極限まで詰め込むことによって勝負するタイプの作家ですので(つまり「ネタ密度」が異常に高い)、逆に作画はシンプルな方が分かりやすくて好ましいと言えるでしょう。

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