[考察] 『フェイトの目的はエクソダス阻止』は成り立つか?
かなり古い記事になりますが、ネギま!のファンサイトの一部でフェイトの目的はエクソダスの阻止ではないか? という話題が展開されていることに気づきました。私が追えるだけの記事を追ってみたところ、これだけ見つかりました。
GiGiさんの投稿「ネギま:フェイトの目的と火星大戦(仮)の考察」(2007/12/16)
「漫研」の掲示板「今週の一番」の#538
LDさんの投稿「6月第1週:どがしかでん 1st period 県下百数十校分の一の逸材」(2008/06/13)
LDさんのBLOG「今何処(今の話の何処が面白いのかというと…)」の記事
「今週の一番追記:ネギま黙示録編」(2008/06/14)
Gaius_PetroniusさんのBLOG「物語三昧~できればより深く物語を楽しむために」の記事
「フェイトの目的はエクソダス阻止~この脚本予想は、物凄いかも・・・」(2008/06/14)
その内容は簡単にまとめると、以下のようになります。
(1) 魔法世界は近い将来、不可避的な大規模災害が発生して崩壊する。
(2) その結果として、旧世界(現実世界)に突然、5億人近い避難民が押し寄せてくる。
(3) その結果として、旧世界と魔法使いとの対立が起こり、未来では世界規模の混乱が発生している。
(4) 超の目的は「全世界規模の魔法バレ」を起こすことで、魔法世界からの避難民の受け入れ態勢を現実世界側に整えることにあった。
(5) フェイトの目的はゲートを全て破壊することで、魔法世界からのエクソダスを阻止することにある。
つまりフェイトの言った「世界を救う」とは現実世界を救うことであり、クウネルのいう「奴らは世界を終わらせるつもりです」とは魔法世界を終わらせることになります。
これを読んだとき、素直に凄い! と思いました。まず、フェイトの目的と超の目的を関連付けて考えると言う発想が私にはなかった。そして当時の限られた情報の中で(2007/12/16時点で22巻197時間目、2008/06/13時点でも24巻216時間目相当)これだけ論理的に推論を導き出すその手法に、とても感銘を受けたものです。
そもそも超は魔法を世界にバラすことにどんな目的があるのか、最後までその理由を明かしませんでした。麻帆良祭編の連載中はそれが非常にストレスになっていたのですが、私はこれを、敢えて敵側である超への読者の感情移入を拒むことでネギ側に感情移入させようとする技法だと考えていました。しかしこれがそのまま続く魔法世界編の伏線になっているのかと思ったときの衝撃は計り知れませんでした。
それで本当にこの論が成り立つのかずっと考えていたのですが、とりあえず超の方に関しては敢えて否定するだけの理由もないだろうと思いました。超が計画を遂行した理由もその行動原理も作中には全く描かれていないので、超の側からは肯定することも否定することもできないと考えて保留にします。そもそも超は未来人という設定ですので、未来に起こるはずの事件を理由に行動を起こしたとしても、それが何であるかは「実際に起こってみないと分からない」とするのが正解でしょう。
するとフェイトの側から考えてみることになるわけですが、今までのフェイトの言動を思考してみた結果、やはりこれは成り立たないのではないか? という結論に達しました。
この予測を成り立たせるためには、ある前提条件を説明できることが必須となります。つまり
フェイトはどうやって、これから魔法世界に起こるはずの大災害を予測できたのか?
これを説明できなければ、未来で起こる魔法世界の大災害から現実世界を守るためにフェイトたちはゲートを閉ざそうとしていると言う推測がそもそも成り立ちません。
でも本当に、フェイトはどうやって知ることができたのか?
まず超鈴音からという筋はあり得ません。作中で明確に否定されています。
まず漫画読みの作法として、ここまで作中で明確に否定されている以上、それと明らかに矛盾する描写が無い限りはそういうものだとして話を進めるしかありません。仮に明石教授とドネットには分からない裏のつながりがあったとすれば、それはドネットたちが無能だった(つまり信用できない)ということになってしまいます。
もちろん超は未来人ですから、実はフェイトも未来人であり、未来の世界ではつながりがあったと仮定すれば現代人であるドネットたちには調べようがないという考え方もあります。その場合は、超とフェイトは目的を同じくする同志だったということになるでしょう。ただ超の場合はより穏便な方法を選んだのに対し、フェイトたちの場合はより過激な方法を選んだという方法論の問題となります。
しかしその論もやはり成り立ちません。ネギま!世界では、時間跳躍(タイムスリップ)は魔法の力だけでは実現できないということになっていますし、実際に超鈴音の《カシオペア》も、魔力こそ使用してはいますがその技術体系には科学が使われていました。
つまりフェイトたちが本当に未来世界からやってきたとすれば、その技術体系には科学が使われているはずなのです。少なくとも伏線として、未来的な(超)科学技術を使用した機械を持ち出すぐらいのことはやってきてもいいでしょう。
ところが、登場以来フェイトが使った技術の中には、西洋魔法の他には東洋呪術は使用したことはあれども、明らかに科学技術を使ったという形跡がありません。ネギでさえ、携帯電話やパソコンをそれなりに使用しているというのに……
以上の理由から、フェイトの動機には未来は関係していないと考えました。フェイトはまず間違いなく現代人、それも魔法使い側の人間です。
ところがそうなると、今度はフェイトが防ごうとしている魔法世界の大災害は、現在の段階では予知可能であるということになってしまうのです。それどころか、フェイトが20年前の大分烈戦争(ペルム・スキスマティクムせんそう)の黒幕とされる秘密結社「完全なる世界(コスモエンテレケイア)」の残党であるならば、実に20年以上も前から予知可能だったということになってしまうのです。
もしそうなら、魔法世界の国々が何らかの手を打ってこないなどとは思えません。魔法世界においては回避不可能な大災害だと予想できるのですから、すくなくとも脱出経路ぐらいは確保しておきたいはずです。
それなのにエヴァの弁からすると、魔法世界は旧世界に対して孤立主義を取っていると言います。
その証拠に魔法バレした未来の世界では、麻帆良の魔法先生は責任を取らされて本国に召還されることを覚悟していました。つまり魔法世界にとっては、旧世界に魔法の存在が知られることは望ましくないという態度を崩していないのです。これは近い将来に大規模災害が起こって、旧世界側に国民を避難させたいというものが執る政策ではありません。
つまり近い将来に起こるはずの大災害は、フェイトたち「完全なる世界」という秘密結社には20年前から予測可能で、なおかつ魔法世界の国々においては予測不可能、あるいは予測しても信じてもらえないことであるということになってしまうのです。そんなことがあり得るでしょうか?
一つだけあり得るとすれば、それはその魔法世界にこれから起こる大災害というものが、フェイトたち「完全なる世界」が意図的に起こす人災だということになります。
そして223時間目では、ついにフェイトも自分たちが魔法世界に破滅をもたらすと宣言しました。
しかし、だとするとフェイトたちがエクソダスを阻止することは、自分たちがこれから起こす大災害から魔法世界の住人が避難するのを防ぐため、ということになってしまいます。超鈴音と目的を共有するにしては、これはいささかマッチポンプが過ぎやしないでしょうか?
ここにいたって、私はフェイトの目的が大災害からのエクソダス阻止だという論は成り立たないと推測しました。しかしだからといって、フェイトや超の本当の目的が分かったわけでもありません。去年の12月や今年の6月の時点で両者を結びつけて推論したことが凄いという事実には変わらないし、敢えてそれを否定するつもりもありませんでした。
ただ、超鈴音の言動からフェイトの目的を類推する、あるいはフェイトの言動と超の目的を絡めて考えるということは常に引っかかっていました。今の私としては、それは超のこのセリフに集約されているのではないかと考えています。
この、最後の最後で超が残した謎のセリフは、当時は意味が不明でした。しかしフェイトの事件を絡めて考えると、もしかしたらという仮説がひとつでてきました。
もしかしたら超は、事件を起こすことそれ自体が目的だったのではないかと。
(この推測に対する検証は次の記事で)
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